社会人の勉強編 ~読んだら得する日商簿記検定3級・2級の攻略法~

社会人が勉強する分野として有用な日商簿記検定
今回は実際の3級・2級の出題構成とその攻略法を見ていきましょう。

3級の試験内容

3級の試験問題は、第1問から第5問までの5部で構成されていて、点数配分はこのようになっています。

・第1問(20点)
・第2問(10点)
・第3問(30点~32点)
・第4問(10点)
・第5問(30点~32点)

ここから分かることは、第1問、第3問、第5問の配点が大きく第2問、第4問の配点が小さいことです。
100点満点のうち、合格ラインが70点ですので、第1問、第3問、第5問で得点できてしまえば、第2問、第4問は0点でも合格できてしまいます。

このような理由もあって、試験対策としては、まずは第1問、第3問、第5問を優先して勉強していくことをおすすめします。

そして、その各問に、どんなカテゴリーの問題が出題されているのかを押さえておけば、効果的に勉強を進められることが分かります。

第1問

では早速、第1問から見ていきましょう。

第1問の内容としては、仕訳問題です。これまでに出題された「過去問」の類似問題が多く出題されているので、過去問、または過去問に似ている問題(※2)を重点的に解いておけば正解率が高まることになります。

第2問

次に、第2問についてです。

基本的には「帳簿記入の問題」が多く出題される傾向にあり、重点的に押さえたいところです。

帳簿の種類には、このようなものがあります。

・商品有高帳
・売掛金元帳
・買掛金元帳
・手形記入帳
・現金出納帳
・小口現金出納帳
・当座預金出納帳 

そのほかには、「補助簿を選択する問題」も出題されています。
また、帳簿記入だけではなく「勘定記入」が出題されることもあります。
その中で、売上原価の算出減価償却費など、処理の仕方によって仕訳の勘定科目が異なる問題が出題されていることが特徴です。

ポイント
勘定記入の違いは、処理の仕方によってパターン化して、理解しておこう。

第3問

続いて、第3問についてです。

第3問には「試算表の作成問題」がよく出題されています。
この傾向は、長い間変更がありませんので過去問を必ず解いておき、試験直前期には自力で解けるようになるまで、繰り返し勉強しておくことが重要です。
そのほか、出題確率は低いですが、「財務諸表作成に関わる問題」が出ることもあります。そのため、こちらも押さえておくと確実さは増します。

第4問

さらに、第4問についてです。

第4問では、ほかの問題に比べると様々な問題が出題されていて、一番対策しづらく感じるかもしれません。
統計的には「伝票会計に関する問題」の出題頻度が高く、勘定記入訂正仕訳決算仕訳と続きます。
しかしながら、やはりどれも過去問に似た問題が出題されてこることが多いのです。
そのため、基本的には、過去問と、それに似た問題を繰り返し解いておくことがポイントです。

第5問

最後に、第5問についてです。

第5問では、「精算表の作成問題」が出題されています。
そのため、過去問と、それに似た問題を解いて、その出題形式に慣れておくことが重要となります。
まれなケースとしては、「財務諸表の作成問題」が出題されることもありますが、その対策としても、過去問と、過去問に似た問題を解いておくことで準備しておくことはできます。

続いて、2級の出題構成とその攻略法を見ていきましょう。

2級の試験内容

まずは、試験内容からです。
2級の試験も、3級の試験と同様に、第1問から第5問までの5部で構成されていて、点数配分はこのようになっています。

・第1問(20点)
・第2問(20点)
・第3問(20点)
・第4問(20点)← 工業簿記
・第5問(20点)← 工業簿記

この均等な点数配分から分かることは、特定の設問で苦手を作らず得点していかなければならないということです。
後で述べることにもなりますが、商業簿記と工業簿記を比べると、工業簿記の方が対策を立てやすく、また得点しやすいため、第4問、第5問で確実に得点しておくことが得点となります。

2級の問題は3級の問題に比べると、以前よりも変化球が投げられるようになってきたと言われています。
そうであっても、出題構成にはある程度のパターンがありますので、3級同様、どんな問題が出題されるのかについて押さえておけば、効果的に勉強を進められることが分かります。

第1問

では、まずは第1問から見ていきましょう。
第1問の内容としては、仕訳問題です。
これまでに出題された「過去問」の類似問題が多く出題されているので、過去問、または過去問に似ている問題を重点的に解いておけば正解率が高まることになります。解答してく中で間違った問題に対しては、正解するまで、根気よく何度も解き、慣れておくことが大切です。

第2問

次に、第2問についてです。

第2問では、伝票会計(3伝票制)や個別論点(銀行勘定調整表、株主資本等変動計算書、固定資産や有価証券の一連の取引、商品売買等)が出題されています。
どちらも事前の対策で初見を防ぐことができるため、過去問、または過去問に似ている問題を解いておくことが重要です。また、伝票会計よりも、個別論点の方が難易度は高いため、時間をかけて理解しておく必要があります。

第3問

続いて、第3問についてです。

第3問では財務諸表の作成問題や精算表の作成問題などが出題されます。
最近は特に連結財務諸表の作成問題の割合が増えています。連結は2級から出題される論点ですので、単独の財務諸表よりも出題される確率は高くなっています。
財務諸表の作成問題に対して、苦手意識を持っている社会人も多いですが、その場合にも、貸借対照表と損益計算書の基本に戻り、過去問や過去問に似た問題を解くことで事前に対策しておくことができます。

第4問・第5問

最後に、第4問・第5問(工業簿記からの出題)についてです。

第4問では、費目別計算の出題割合が高く、続いて個別原価計算、本社工場計算、標準原価計算となっています。
第5問では、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算などが出題されています。
工業簿記商業簿記に比べて対策が取りやすく、得点源になりやすいと言われています。それは、解法パターンが決まっているからです。
今後は問題の難化も想定されますので、問題を解く際には、数字、金額、処理方法の意味まで考え、解いていくことがポイントとなります。

シズリーくん

どちらの級にも共通して言えることですが、問題を解く際には、解答する順番についてあらかじめ計画を立てておくことも重要ですね!

例えば、日商簿記検定には、第1問から順に解いていかなければならないというルールは存在しません
そのため、分かるものから、つまり得点できそうな問題から解いていくことがおすすめです。自信のない問題から取り掛かって、問題を解いていく中で、徐々に自信を失っていくより、できる問題から解いていって、少しでも波に乗って解答していく方が、試験と言えども気分は楽なものです。そのため、過去問を解いて対策を取っていく時期にも、この手法は是非練習して体得しておきたいものです。

以上、今回は「社会人の勉強編 ~読んだら得点に結びつく3級・2級の攻略法~」についてお届けいたしました。

コロナウィルスの影響で検定試験の延期(※3)もアナウンスされ始めていますので、
この際、思い切って一気に勉強して日商簿記検定1級を目指そうと思い始めている社会人の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
次号では「社会人の勉強編 ~いっそのこと、日商簿記検定1級取得を目指してみる~」をお届けいたします。

【脚注】
与えられた勘定科目(※1)… 選択肢にない勘定科目を使用して解答しても、得点には結びつきません。
問題をよく見て解答していく必要があります。選択肢がヒントになってくれることもあります。

過去問に似ている問題(※2)… 予想問題集や直前対策本に似たような問題が掲載されています。

検定試験の延期(※3)… 直近の日商簿記検定試験日は2020年6月14日(日)でしたが、商工会議所によっては、試験延期のお知らせがされ始めています。