将来なりたい職業ランキングでも常に上位に入る「看護師」。
近年では「看護婦」ではなく「看護師」と呼ばれるように、男性の姿も増えています。
白衣を着て、お医者さんと共に患者さんのために力を注ぐ姿は、とてもかっこいいものです。
では、そんな看護師になるためにはどうすれば良いのでしょうか。
看護師とは
看護師とは、看護師国家資格に合格した者をいいます。
看護学校や大学などで専門的な知識を学び、国家試験に合格しなければ「看護師」と名乗ることはできません。
医師のサポートをはじめ、患者さんのケアまで、看護師の仕事内容は実に多岐に渡ります。
看護師の主な仕事
- 医師のサポート(治療に必要な器具や道具を揃えたり、処置をするなど)
- バイタルチェック(体温や血圧、脈拍などの測定)
- 点滴・注射・採血など
- 患者の病状の把握
- 身体介助
- カルテの記入
- 患者やその家族へのケア
一概に看護師といっても、診療科や勤務先によって仕事内容は変わります。
内科や外科、精神科、耳鼻科など、診療科によって必要な知識や技術はそれぞれです。
病院、高齢者などの福祉施設、訪問看護事業所など、勤務先もたくさんの種類があります。
看護師を目指すのであれば、あらかじめどういった現場で働きたいのかを明確にしておく方が良いでしょう。
准看護師とは
准看護師とは、都道府県に認可される資格で、知事試験に合格した者をいいます。
看護師とは違い、国家資格ではありません。
准看護師養成所などを卒業し、知事試験を受けて資格を得ることができます。
実際の仕事内容は看護師と変わりませんが、医師や看護師の指示のもとでなければいけません。
准看護師は、看護師と仕事の範囲はさほど変わらなくても、キャリアアップや給料面で差が生じます。
准看護師になってから看護師になることもできますが、新たに看護学校へ通わなければいけないので年数がかかってしまいます。
そのことを踏まえて、看護師なのか准看護師なのか、将来を見据えた上で目指す資格を決めておいた方が良いでしょう。
看護師になるためには
資格を持たずに看護助手として勤務し、実務経験をいくら積んだとしても、学校等を卒業しなければ国家試験受験資格が与えられないのです。
しかし、年齢に制限はないので、何歳であっても目指すことができます。
実際に、社会人として何十年も働いた方や、主婦の方などがキャリアチェンジして看護師になったというのは珍しくありません。
では、看護師になるまでのルートをみていきましょう。
高卒者ルート
普通高等学校を卒業している方は、3年制の看護専門学校か看護短期大学に進むのが最短です。
4年制の看護大学に進むメリットは、取得単位によって助産師や保健師など、看護師の他にも国家資格を得られる可能性があることです。
また、看護専門学校は看護の知識を学ぶのが中心であるのに比べ、看護短期大学や看護大学では他の分野の学問も同時に学ぶことができます。
心理学やスポーツ学など、看護師になる上で持っていて有利な知識を得ることができる場合があるので、どんなことが学べるのか、学校の特徴を詳しく調べて、最適な学校を選ぶようにしましょう。
中卒者ルート
中学卒業時、すでに看護師になることを決めているならば、5年一貫制看護高等学校に進むのが最短ルートです。
3年の基礎科目を修了すると同時に高校卒業資格が与えられ、そのまま試験なしで専門科目に進むことができます。
卒業と同時に国家試験を受験できるので、20歳で看護師になることが可能です。
准看護師ルート
准看護師になってから看護師になることもできます。
その場合は、改めて看護学校に2年通わなければいけません。
准看護師になるには、准看護師養成所や専門学校、大学等を修了し、准看護師試験に合格することが必要です。
高校を卒業をしているなら問題なく看護学校に入学できますが、最終学歴が中学卒業の方は准看護師として3年の実務経験がなければ看護学校に入学することができません。
准看護師から看護師になると学校に通う期間が多い分、少し時間がかかってしまうのがデメリットです。
しかし、准看護師として医療や看護の現場を経験して、改めて正看護師になりたいと思うということは、向上心があり、看護の仕事が好きだと思えたからでしょう。
そういった方が医療の現場で働いてくれるということは、患者さんや家族側からすればとても心強いものです。
社会人ルート
全く違う業種で働いていたり、社会人として年数を重ねている方でも看護師にキャリアチェンジできます。
年齢制限はありませんので、歳だからといって諦める必要はありません。
ルートとしては、学歴によって上記の高卒ルート、もしくは中卒ルートで目指すことができます。
また、働きながら資格取得ができるよう、夜間制を選択するのも一つの方法です。
勤務先によっては、看護助手として働きながら資格取得をバックアップしてくれるところもあるので、色々な求人を探してみましょう。
看護師国家試験
試験要領
看護師国家試験は、毎年厚生労働省が公示する日程に沿って行われます。
試験が実施される場所は、北海道・青森県・宮城県・東京都・新潟県・愛知県・石川県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県です。
受験資格が与えられるのは、養成学校等を卒業した者及び卒業見込みである者。
出題される科目は、「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」「健康支援と社会保障制度」「基礎看護学」「成人看護学」「老年看護学」「小児看護学」「母性看護学」「精神看護学」「在宅看護論及び看護の統合と実践」です。
必修問題、一般問題、状況設定問題の合計240問が出題されます。
合格率
看護師国家資格には定員がないため、基準点を超えていれば合格できます。
必修問題は80%以上の正解率が求められますが、一般問題と状況設定問題はその年によって合格ラインが変動します。
その基準は、合格発表の日に厚生労働省から発表されます。
合格率は例年90%前後であり、比較的合格しやすい傾向にあります。
キャリアアップ
看護師の資格を得てからも、様々なキャリアアップの道があります。
医療はとてもたくさんの分野に分かれており、全てに精通することは非常に困難です。
そこで、分野を絞ったプロフェッショナルとなることや、助産師などの新たな資格を得ることで看護師としてステップアップすることができるのです。
認定看護師
特定の分野において、熟練した看護技術と知識を有します。
日本看護協会の認定看護師認定審査に合格した者で、いわば看護のスペシャリストです。
認定審査を受けるには、看護師として5年以上実務研修し、認定看護師教育機関を修了する必要があります。
また、合格してからも5年ごとに更新しなければいけません。
比較的重度の病状に対するケアを中心とした、19の認定看護分野が認定看護師制度委員会によって定められており(2020年5月現在)、その中には感染管理も含まれています。
今回の新型コロナウィルス感染拡大により、大変なリスクの中、特に重要な業務を担っていることは言うまでもありません。
認定看護分野
- 感染管理・がん放射線療養看護・がん薬物療法看護・緩和ケア・クリティカルケア・
呼吸器疾患看護・在宅ケア・手術看護・小児プライマリケア・新生児集中ケア・
心不全看護・腎不全看護・生殖看護・摂食嚥下障害看護・糖尿病看護・乳がん看護・
認知症看護・脳卒中看護・皮膚排泄ケア
専門看護師
専門看護分野のいずれかにおいて、高度な技術と深い知識を有します。
日本看護協会が実施する、専門看護師認定審査に合格しなければいけません。
認定審査を受けるには、看護師の実務研修5年以上が必要です。
認定看護師同様、5年で更新する必要があります。
専門の分野を極めるということは認定看護師と似ていますが、定められている看護分野は、技術に加え精神面やコミュニケーション面でのケアが含まれます。
専門看護分野
- がん看護・精神看護・地域看護・老人看護・小児看護・母性看護・慢性疾患看護・
急性重症者看護・感染症看護・家族支援・在宅看護・遺伝看護・災害看護
認定看護管理者
病院や老人保健施設などにおいて、管理者としての必要な知識や技術を有します。
看護実務5年以上の経験と、510時間以上の認定看護管理者教育を修了するか、大学院で看護管理の修士課程を修了することが必須です。
管理者として看護師の育成や労働環境の整備などだけでなく、医療事故などが起こらないように危険を察知したり、より安全な看護現場の体制構築などができなければいけません。
さらに、患者や地域住民に対し、自身の管理組織が行うべき課題を明らかにして実現していくことも求められます。
医療従事者として患者に向き合うだけでなく、医療・看護全体を見渡して地域に貢献する重要な役割です。
フライトナース
医師とともにドクターヘリに乗り、現場で救急処置のサポートを行う看護師です。
日本では2001年に初めてドクターヘリが導入され、より広い地域に迅速な医療を届けることが可能になりました。
以来、全国の病院にドクターヘリの導入が拡大しています。
フライトナースになるためには
- 看護師経験5年以上
- 第三級陸上特殊無線技士資格取得
- ドクターヘリ講習会の受講
- 救命救急の資格「ACLSプロバイダー」及び「JPTECプロバイダー」の取得、もしくは同等の知識と技術
いつ要請が来るか分からないので、いつでも出発できるような準備と心構えが必要です。
要請がきてから、およそ3分で出発するという迅速さや、急ぎの中でも冷静さを保つことが求められます。
治療を受けられるまでに、これまで何分も何時間もかかってしまっていた僻地などにとっては、革命的なドクターヘリ。
救急看護としては、最もやりがいの感じられる仕事の一つでしょう。
助産師
助産に対する専門的な知識や技術を要します。
日本では現在、女性しか取得することができない資格です。
助産師になるには、助産師課程を修了し、助産師国家試験に合格しなければいけません。
看護大学で看護課程と助産師課程の両方を受け、卒業と同時に両方の国家試験を受験することもできます。
しかし、看護師資格がないと助産師資格を得ることができないので、仮に看護師の試験が不合格であった場合、助産師の試験が合格であっても助産師資格を取得することはできません。
助産師の資格を有する看護師であるということは、病院などへの就職にも非常に有利です。
助産師は、正常分娩に限り、産婦人科医がいなくとも分娩介助をすることができます。
保健師
地域住民に対し、健康管理や保健指導を行います。
看護師資格を有した上で、1年以上の課程を修了する必要があります。
助産師と同じように、看護大学で同時に取得することも可能です。
勤務するのは、都道府県が設置する保健所や市区町村の保健センターが主です。
もちろん病院などの医療機関でも働くことができますが、多くの保健師は公務員である「行政保健師」として働いています。
看護師のリスク
看護師という仕事の範囲はとても広く、医療の現場では絶対不可欠な存在です。
そして、より多くの患者さんに安心して医療を受けてもらうためには、細やかな仕事が求められます。
テキパキと処置をしたり、患者さんを優しくケアする姿は、誰が見てもかっこいいと感じるでしょう。
しかし、常にリスクとは背中合わせであることを忘れてはいけません。
新型コロナウィルスのような得体の知れない感染症などに対応する場合は、自身も感染してしまうというリスクがあります。
医療の最前線に身を置くということは、とてつもないリスクを背負っているということなのです。
実際に看護師になったとしても、単なる憧れだけでは続かないかもしれません。
どんな仕事にも責任やリスクはつきものですが、命の現場であるということは、それ相応のリスクがあることを覚悟しておきましょう。
看護師はやりがいのある仕事
世界中で新型コロナウィルスの感染が拡大し、日本も医療崩壊の危機に直面しました。
その最前線で戦っているのは医師、そして看護師の方々です。
増え続ける患者さんに対し、医師や看護師の手が足りなくなってしまった医療機関も少なくありません。
そんな中、危機を感じた看護協会の呼びかけに対し、すでに現役を退いていた有資格者の方が何百人も一時的に現場復帰しました。
そのおかげで、逼迫していた医療現場や、幾人もの患者さんが救われることになりました。
新型コロナウィルスをその手で終息させることができるのは、医師や看護師などの医療従事者しかいません。
戦後最悪と言われる危機の中で、世界中の人々が医療従事者に対し、心から感謝をし、尊敬の念を抱いたことでしょう。
看護師という仕事は、時に壮絶なものであったりしますが、とてもやりがいのある誇り高き仕事です。
人の役に立ちたい、使命感を持って働きたいという方にはぴったりの仕事でしょう。