現役パーソナルトレーナーが教えるベンチプレスの上げるコツとタイミング
はじめに、ベンチプレスといえば筋トレにおいてもっとも人気が高く有名な種目ではないでしょうか。
実際私自身もジムに行くと、すべてのラックでベンチプレスが行われている場面をよく目にします。
ベンチプレスを行うことで、男性は厚い胸板とたくましい上半身を手に入れることができますし、女性はバストアップなどの効果を得ることができます。
今回は、ベンチプレスをもっと上げられるようになりたい!
そんな方に向けて、パーソナルトレーナーとして数多くの方に指導を行い目標達成に導いてきた私自身の、経験と知識に基づいてお伝えします。
ベンチプレスとは?
まずは、ベンチプレスの基本的な概要です。
ベンチプレスは、ベンチ台に仰向けに寝た状態で、5ポイントコンタクトと呼ばれる、頭・肩・お尻・右足・左足の5箇所をベンチにつけた状態から始まります。
両手で掴んだバーを胸まで下ろしたら、そのまま上げていく動作です。
主動として使われる筋肉は大胸筋で、補助として使われる筋肉は上腕三頭筋と、肩の前側にある三角筋前部です。
ベンチプレスで大胸筋に上手く効かせられない理由
ここでは、ベンチプレスで大胸筋に効果を感じることができない方がやってしまいがちな誤りを、3つに分けて解説していきます。
1.胸をしっかり張れていない
筋トレの基本は、筋肉の「起始」と「停止」と呼ばれる部分を物理的に近づけることで、筋肉を収縮させ力を発揮することにあります。
胸を張れていない状態だと、上腕三頭筋への関与が強く、上記の起始と停止が近づきにくく、大胸筋の力が上手く発揮できない状態となってしまいます。
・胸をしっかり張る方法
肩甲骨を寄せた状態で下制、つまり下にさげた状態をキープします。
わかりにくいと思うので、この文を見ながら一緒にやってみましょう。
息を吐いて、そのあと大きく息を吸って背筋を伸ばしてみましょう。
すると、胸が大きく張られ、肩甲骨が寄って下制されます。
この状態が、胸郭と呼ばれる部分が大きく開いて大胸筋をしっかり使える状態です。
上記を意識して行えるようになったら、いよいよ実践してみましょう。
・ベンチプレスのタイミング
1.ベンチ台に仰向けになったら、両手でバーを掴み、先程の肩甲骨をさげた状態を作り、ラックから外します。
この時、身体が左右にブレてしまう時は、バーを下げずバランスを取ります。
2.しっかりバランスをとり下ろせる段階になったら、大きく息を吸いもう一度しっかり胸を張った状態を作って、下ろしていきます。
3.胸まで2秒ほどかけてゆっくり負荷を受け止めながら下ろしたら、胸を張った状態をキープしたまま上げていきます。
※バーを上げる時の注意点
胸まで下ろしたバーを、頭方向に向かってあげてしまうと、三角筋前部への刺激が強くなるので、ある程度真っ直ぐに上げていきましょう。
2.バーを胸まで下ろせていない
筋トレの中で可動域という言葉があります。
ベンチプレスであれば、バーを持ち上げた状態から下ろした所までが可動域です。
この可動域を多く取ることで、大胸筋の力を多く発揮することができます。
バーをしっかり胸まで下ろせていない、あるいは、途中で切り返してしまっている方を多く見かけます。
胸まで下ろすことで筋肉はストレッチされ、広い可動域で動かすことで収縮し、力を発揮します。
もし、胸まで下ろして肩が痛む場合は、肘が開きすぎていたりバーを持つ位置が狭すぎたり広すぎる場合があります。
※もし、過去の怪我が原因で肩を痛めやすい方はベンチプレス以外のトレーニングを行うことも、おすすめします。
また、バーを下ろす位置は胸のトップを意識しましょう。
お腹側すぎても、首側すぎても肩の痛みの原因となります。
3.手幅とラックの位置に問題がある
意外と知られていないことですが、ベンチプレスを行う際の手幅が非常に重要です。
バーには81cmラインと呼ばれる、小さなラインが入っています。
ベンチ台に寝て、バーを見た時に外側の両サイドに入っているラインです。
ベンチプレスを行う際、この81cmラインにどの指をかけるかで、可動域と優位になる筋肉が異なってきます。
・81cmラインのどこに指をかけるか
一般的には、81cmラインに人差し指をかけると、可動域は狭く大胸筋の関与が強くなり、
小指をかけると可動域は広くなり上腕三頭筋の関与が強くなる傾向があります。
・オススメの握る位置
身長や肩幅によりますが、一般的には81cmラインに薬指か中指がオススメです。
どの指をかけるかは実際に行ってみて、肩に違和感がないか、力は上手く発揮できるかを確かめながら行って決めましょう。
・ラックの位置も重要
ラックを高く設定しすぎて、手を伸ばしきった状態でラックから外すと、スタートポジションで肩甲骨を寄せることが難しくなります。
逆に、ラックを低くしすぎると、スタートポジションに持って行くだけで多くの力を使ってしまいます。
肩甲骨を寄せた状態をキープし、力を使わずラックアップができる位置を探しましょう。
いかがですか?
意外と当てはまっているという方もいるかもしれませんが、これらをしっかり改善することで、効果的に大胸筋を鍛えることができます。
ベンチプレスの重量を伸ばす方法とは?
では、「100kgを超えたい」「今以上に重量を扱っていきたい」という方のために、意外と見落としがちな要素をお伝えします。
1.ベンチプレスを行う日を増やす
まずは、シンプルな理由です。
筋トレを分割法で行っていて、ベンチプレスを行うのは週に1度という方も多いはずです。
しかし、人の筋肉が回復にかかる時間はおよそ36時間から72時間で、その時間が過ぎれば個人差はあるものの、十分に回復しているといえます。
筋肉は、筋トレをすることで受ける刺激に適応しようとする「ストレス応答」というメカニズムによって発達していきます。
刺激を受け、休息を経て以前より発達するメカニズムですので、このサイクルを早くすることが有効です。
つまり、週に2回はベンチプレスを行い、フォームを習得したり、ベンチプレスそのものに慣れることは重量を伸ばす上で非常に大事な要素です。
※ただし、1週間の1部位に対しての総セット数は変えないようにしましょう。
今まで週1で20セット行っていた場合は、1日10セットにして、合計1週に20セットとなるようにします。
20セットで週に2回行うと、合計40セットとなり、オーバーワークになる可能性があります。
しかし、筋トレを長く続けて適応していくことで、セット数を多くこなせる可能性もあります。
2.重量を少しずつあげる
これもシンプルですが、意外とできていない方が多いです。
前回のベンチプレスで、何kgを何回あげられたか覚えていますか?その前はどうですか?
人の記憶はあやふやなものですので、メモや記録に残すことで、自分の進歩がわかります。
筋トレにおける法則に「漸進性の法則」があります。
徐々に負荷を上げていくことで、筋肉はより発達していくという法則です。
毎回同じ重量を扱っていても、目標の重量には達しません。
しかし、いきなり重量をあげてもフォームが崩れたり、上手く効果が得られないといった弊害があります。
そこで、記録をとって前回行った重量で上げた回数より、1回でも多くあげることを目標にし、規定回数まで到達したら、少しずつでも重りを増やしていくことが大切です。
3.補助筋を鍛えていく
ベンチプレスにおいて、使われる筋肉は大胸筋だけではありません。
・上腕三頭筋
バーを押し上げる時に使い、この部分が強くないと最後のもう一押しができず、上げきることができません。
ある程度まで上げられて、もう一押しができない方は上腕三頭筋の種目を加えて鍛えましょう。
オススメの種目は、ケーブルプッシュダウンや、ライイングエクステンションなどです。
・三角筋前部
バーを押す時には、肩の前側の筋肉も大きく関与します。
特に、バーを下ろす時に痛みを感じたり、胸につけてから上げられないという方は、この三角筋前部をしっかりストレッチさせて鍛えられる種目を行いましょう。
オススメの種目は、フロントレイズや、ショルダープレスなどです。
パーソナルトレーナーが教えるベンチプレス上達の裏技
最後に、私が実際に行っているベンチプレス上達の裏技をお伝えします。
あくまで、ある程度ベンチプレスを行なっていて伸び悩んでいる方に向けての内容ですので、始めたての方はまず上記の方法を徹底してみてください。
1.ベンチプレスのセットの組み方を変える
ベンチプレスを行う際、どのようなセットの組み方をすればいいか分からない方も多いはずです。
基本的には、10回を3セット行うことがベターとされていますが、その方法だけではある程度で重量は打ち止めになりやすいです。
そこで、「期分け」をおすすめします。
本来、アスリートは3ヶ月などの期間を設けてトレーニングの内容を変えていきます。
・筋力をあげるトレーニングを行う筋力期
・プライオメトリクスなどを用いた筋の瞬発的な力を鍛える筋パワー期
このように、行うトレーニングの内容やセット数を変えていきます。
実は、この期分けは筋トレにおいては、週の中で行っても有効です。
例えば、週に2回3日おきにベンチプレスを行う場合。
1回目はMAX重量の85%から92.5%程度の重量を使用し、反復回数が3回から5回しか行えない重量で、5セット行います。
2回目は、MAX重量の65%から75%程度の重量を使用し、10回から15回ほど行える重量で、3セット行います。
1日目は、週の頭で筋疲労がないので、高重量を扱いMAXに近い重量で筋力を伸ばしていきます。
2日目は、ほかの部位をトレーニングした疲労や1日目の神経系の疲労が残っているので、筋肥大を目的としたセットを組んでいきます。
このように、筋肉に与える刺激を細かく変化させることで、ストレス応答を起こさせることができます。
重量を更新するタイミングは悩みどころですが、2for2ルールを目安にするといいでしょう。
※2for2ルールとは
同種目において、2度のトレーニングで2セット続けて規定回数を超えることができたら重量を更新することです。
1週間に2回ベンチプレスを行う場合で、規定回数は5回とします。
1日目に90kgを2セットとも6回あげることができ、2日目にも90kgを2セットとも6回あげることができた。
次の週では、95kgで目標回数を5回とし、同じく2度のトレーニングで2セットで規定回数をあげることを目標とする。
2.お尻を上げて脚を使い胸骨を立てる
この方法は、先輩のトップボディビルダーの方にご教授いただき、私が実践して効果を感じた方法です。
筋トレにおいて、筋肉の筋走行に沿った軌道で動かすことが重要となります。
ベンチプレスにおいては、仰向けで行うので、しっかりブリッジを作り胸骨を立てることで、バーベルを上げる方向と大胸筋の筋走行が一致することで刺激が入ります。
胸を張らずに寝たままだと大胸筋に刺激が入りづらい理由はここにあります。
特に肩幅が広い方は、5ポイントコンタクトでは胸骨を立てることが難しいです。
お尻を上げることで、骨格の問題をカバーしてしっかり大胸筋に刺激を与えることができます。
パワーリフティングの大会ではお尻が完全に浮くと失格となりますが、筋トレにおいては有効な方法になります。
・お尻を上げたベンチプレスの利点
お尻を上げた状態で、しっかり肩甲骨の下制内転(寄せて下げること)を行うことで、胸骨が立ってバーを上げた時に大胸筋を使いやすくなります。
ベンチプレスは、脚で踏ん張る力を上半身に伝えることで強い力を発揮します。
お尻を上げると脚の力を使いやすくなるので、扱える重量も増えます。
また、脚の力の使い方を覚えると通常の5ポイントコンタクトのベンチプレスもやりやすくなるので、おりまぜながら行いましょう。
お尻をあげるといっても過剰に突き出すと、腰椎(腰の部分の骨)を痛める原因になります。
あくまで、軽く浮かせることで胸椎(胸の後ろ側の骨)をストレッチさせ肩甲骨の下制内転を行うことが目的です。
バーが上下する時に、同じようにお尻が上下しないように固定しましょう。
いかがでしたか?
ベンチプレスを挑戦したい方も、壁にぶつかって伸び悩んでる方も、ぜひ参考にしてみてください。
ただし、重量は効果をもたらしてくれますが、深追いはフォームを崩して怪我の元になります。
また、重量は自身の体重にも比例します。
60kgの方が100kg上げるのと、90kgの方が100kg上げるのでは、難易度が異なります。
自身の骨格と体重に合わせて適切なトレーニングを地道に行えば必ず結果は出ますので、怪我なく楽しい筋トレライフを送りましょう。