日商簿記検定とは?
日商簿記とは、企業の経営活動を記録・計算・整理して、企業の経営成績と財務状態を明らかにする技能で、この習得度を測るのが、日商簿記検定試験です。
イメージがつきにくい方には、商工会議所が発行している「高校生がわかる、会社の仕組み(https://www.biznavi.jp/corporation)」を眺めてみると、比較的容易にその概要を掴むことができます。
公的試験である日商簿記検定の受験級には、2つの初級(原価計算初級と簿記初級)と3級~1級まで、全部で5つのレベルがあります。
3級~1級の試験は統一試験で、全国各地で同一日に施行されるものです。
下位級から受験しなければならないという規則はなく、就職・転職でも評価されないなど、知名度も難易度も共に低い2つの初級(原価計算初級と簿記初級)は、受験する必要性は低いと言えます。
企業が採用や人事制度、自己啓発に活用しており、取得を奨励している級は3級以上になります。
そのため、学生時代に簿記の勉強をしておらず、社会人になってから簿記の勉強を始める場合には、3級取得を目指して取り組んで行くのが効果的です。
日商簿記検定は難しい?
2級を受験する上でも3級の内容がその土台になるため、3級の学習内容を理解していることはとても重要です。
3級は、業種・職種に関わらず、ビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格という位置づけです。
基本的な商業簿記(※1)を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベルで、平均合格率は40%前後となっています。
2級は、経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つとなっています。
高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)(※2)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベルで、平均合格率は11%~30%台と受験回によってばらつきがあります。
どちらの級も、独学用の市販教材が充実しているので、専門学校に通わなくとも、費用を抑えながら独学によって合格を目指していくことができます。
通学講座・通信講座を利用する場合には、教育訓練給付制度(※3)を利用し、授業料の一部を国に支給してもらうことも可能です。
では次に、どのように勉強を進めていけば社会人が2級、3級に合格できるのかを見ていきましょう。
まずは、勉強時間の確保として、勉強する期間と時間量を把握し、計画を立て、先を見据えておくことが重要です。
3級の場合は?
3級の場合から見ていきましょう。
合格のために必要な勉強時間は50時間~100時間と言われています。
仮に100時間でシュミレーションしてみると、以下のように勉強期間が割り出されます。
・毎日1時間勉強した場合:3か月超
・毎日2時間勉強した場合:1か月半
・毎日3時間勉強した場合:1か月
・毎日5時間勉強した場合:3週間
統計的には、毎日数時間の勉強で2、3か月かけて合格していく方が多いです。
2級の場合は?
次に2級の場合です。
2級合格のために必要な勉強時間は250時間~350時間といわれています。
前年度には試験問題の改定があり、試験内容が難化していますので、350時間の場合でシュミレーションしてみると、以下のように勉強期間が割り出されます。
・毎日1時間勉強した場合:1年
・毎日2時間勉強した場合:6か月
・毎日3時間勉強した場合:4か月弱
・毎日5時間勉強した場合:2か月超
統計的には、毎日3時間ほどの勉強で3、4か月かけて短期集中型で合格していく方が多いです。
社会人ともなると平日には仕事があり、毎日3時間を捻出し続けていくのは大変な時もあります。そのような時には、すきま時間や休日をうまく使って、勉強ぐせを身につけていくことが時間確保のポイントです。
どんな社会人がこの資格を目指す?
次に、どんな社会人がこの資格を目指しているのかを見ていきましょう。
日商簿記検定は絶対評価(※4)ですので、設定された合格ラインを超えることが重要で、自分自身との勝負ではありますが、同じように頑張って勉強している仲間の存在を意識することで、励みになることもあります。
・利益率を重視する営業担当者
・コスト管理を求められる管理者
・取引先企業の経営状態を把握したい人
・公認会計士や税理士等の国家資格をめざす人
・税務申告を自分で行いたい人
・有価証券報告書等を分析して資産運用を図りたい人
おおよそ、このような目標を掲げる人たちが簿記の勉強に取り組んでいます。
それもそのはず、簿記の知識は、企業の中のあらゆる分野で活かしていくことができるため、多方面に渡ってもスキルアップを目指していくことができるからです。
収入アップと共に、人生を豊かにしたい社会人が目指すべき資格と言えます。
まとめると、企業の活動を適切かつ正確に情報公開する業務を行うにあたって、簿記は必須の知識であって、資格保持していることは社会人にとって大きな強みとなります。
簿記資格を持っていることのメリット
・正しく帳簿をつけられる
・自社の長所や短所を分析できる
・費用や収益率を意識するようになる
・取引先企業の経営状況を把握できる
といった実際の経理のニーズに合った業務の実践に期待が持てます。
そのレベルを目指して経験を積めば、いずれは所属部門や企業の中で中枢の仕事を任されるようになります。
資格取得に向けて努力したリターンとして、簿記の楽しさや業務を通じてその合理性を是非味わって頂きたいです。
以上、今回は「社会人の勉強編 ~日商簿記検定2級・3級の概要~」についてお届けいたしました。
次号では「社会人の勉強編 ~日商簿記検定2級・3級の攻略法~」についてお届けいたします。
【脚注】
商業簿記(※1)… 仕入先から商品を買い、得意先へ商品を売るなどの会社「外部」との取引を記録する簿記のこと。取引を記録し、その記録から財務諸表を作成し、財務諸表を報告するという一連の流れがあります。
工業簿記(※2)… 企業「内部」での取引の記録、製品を作るのにかかった原価の計算、何個売れれば利益が出るかなどの計算を行う簿記のこと。「製造業」特有の簿記です。
教育訓練給付制度(※3)… 働く人の主体的な能力開発の取り組みを支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする厚生労働省による支援制度のこと。
絶対評価(※4) … あらかじめ決められた評価基準に基づいて個々の能力や成績を評価すること。集団内のどの位置にいるかによって個々の能力や成績を評価する相対評価ではない。