大手IT企業やベンチャー企業などでは随分前に採用され、すでに浸透している「テレワーク」。
今回、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大により、これまでテレワークを経験したことのなかった様々な企業が、突然「在宅勤務」への切り替えをせざるを得ない事態となりました。
「テレワーク」は、「tele=離れたところ」と「work=働く」を掛け合わせた造語であり、在宅勤務もその一つです。
在宅勤務へ切り替えると、通勤時間がなくなり時間に余裕が生まれます。
満員電車に乗ることもなく、ストレスが格段に軽減されることでしょう。
ですが、自宅には様々な誘惑があり、集中力を欠いたり、怠けてしまって仕事が進まないなんてことも起こりがちです。
在宅勤務を成功させるためには、どのようなコツがあるのでしょうか。
環境を整えよう
起床時間を決める
在宅勤務になると通勤時間がなくなるため、会社に出勤していた時よりも遅い時間まで眠ることができます。
会社から「何時に仕事を始めるように」と決められている場合もあれば、完全に自己管理である場合もあるでしょう。
すると、仕事を始めるギリギリまで寝ていたり、起きる時間が日によってバラバラになってしまったりする人がいます。
それでは仕事モードへの切り替えがなかなかできません。
「何時に起きて、何時に朝食を食べ、何時から仕事をするのか」をあらかじめ決めておき、必ず実行することが大切です。
電車の時間や遅刻などを気にしなくて良いからといって、ダラダラと過ごしてしまわないようにしましょう。
身支度をする
仕事を始める前に、服を着替えて、髪型をセットしましょう。
女性は出勤時と同じように、メイクをすることをおすすめします。
在宅勤務だと人と会うことがないので、どんな服装をしていようが、どんなに寝癖がついていようが、たとえノーメイクだろうが気にする必要がありません。
しかしそれではオンとオフの境界線が曖昧になってしまい、仕事モードになかなか切り替わりません。
自宅から会社へ向かう通勤という行動は、仕事の脳へと切り替える時間であると言われています。
在宅勤務であるがゆえにその切り替えができず、仕事のパフォーマンスを低下させてしまっては、上司や顧客からの信頼を失ってしまうことになりかねません。
パリッと仕事モードに切り替えるため、きちんと身支度をして仕事を始めましょう。
1日のスケジュールを決める
1日の予定・時間割を決めておきましょう。
朝の始業時間、昼休憩、午後の始業時間、終業時間など、1日のスケジュールを明確にしておくことが大切です。
自宅では、様々な合図を告げてくれるチャイムが鳴りません。
同僚とランチに出かけるということもないため、時間を過ぎても仕事をしていたり、仕事の終わり時がわからなくなってしまうということになりがちです。
必ず決まった時間に休憩を入れ、昼食時間や終わりの時間を決めておきましょう。
時間を決めておくことで、人間は自然と「何時までにこれを終わらせよう」と目標を立てようとします。
在宅勤務であろうと何であろうと、仕事のできる人は時間をコントロールし、メリハリをつけることが自然に出来るといいます。
時間を制するものは、仕事を制するのです。
仕事場を決める
自宅で仕事をする場合、必ず仕事場を作りましょう。
仕事に集中できる場所ならどこでも良いのですが、生活エリアからはなるべく距離をとれるとなお良いです。
仕事以外は立ち入ることができないようにし、そこから離れれば仕事は終わりだと思えることがオンとオフを明確にするコツです。
できることなら専用のデスクとイスを用意し、テレビのないところ、家族の声が聞こえないところが好ましいでしょう。
特にイスは重要で、パソコンに向かうことがほとんどの在宅勤務では、どうしても姿勢が悪くなってしまいがちです。
姿勢が悪いと腰を痛めたり、肩こりが悪化したりと様々な体の不調へとつながります。
そして、良いイスに座ることによって、頭の中のスイッチも切り替わります。
良い姿勢を保ち、集中して仕事ができるように生活と仕事の領域をはっきり分けましょう。
プライベートは切り離す
自分の家というのは、一番心地よいところであり、一番プライベートな場所です。
しかし、仕事をする時には、プライベートは極力切り離さなければいけません。
携帯やスマホを手元に置いて仕事をしていると、ついつい手にとりチェックしてしまいます。
少しだけと思ってSNSなどを見始めてしまうと、いつの間にか驚くほどの時間が過ぎてしまっていたなんてことがよくあります。
プライベートなSNSやメールのチェックは、仕事中はできないようにする工夫をしましょう。
例えば、アプリを容易に開ける場所に置かず、たくさんの行程を踏まないと見れないように、深いところに格納するなどです。
音楽・アロマなどの活用
音楽を聴いたり、好きなアロマを焚いたりすることも良いでしょう。
一見、仕事とは関係ないように感じますが、集中できるならぜひ取り入れたいものです。
みんなと同じ空間にいては、自分の好きな香りを楽しんだり、好きな音楽を聴いたりすることはできません。
仕事の邪魔になってはいけませんが、自分の好きな空間を作り上げられるというのは、在宅勤務の大きなメリットです。
集中力やパフォーマンスの向上につながるならば、仕事場作りはとことんこだわりましょう。
コミュニケーションツールを活用
在宅勤務をしていると周りに人がいないため、時に孤独感を抱いてしまう方がいます。
そうならないように、チャットなどコミュニケーションツールをおおいに活用しましょう。
上司、部下、そして同僚といつでもやりとりができるよう、全員が共通して使えるツールの存在はとても重要です。
1日のうちに誰かと一言二言交わすと交わさないでは、モチベーションが全く違ってきます。
冗談を言い合うでも構わないので、つながりを感じることが大切です。
業務をスムーズに
To-Doリストをつくる
抜け目なく業務ができるよう、タスクをTo-Doリストにまとめておきましょう。
在宅勤務では、できていない仕事があった場合、誰かに指摘されるという機会も減ってしまいます。
仕事の管理は、基本的に自分で行わなければいけません。
何をいつまでに、どれくらいの時間で仕上げるのかをはっきりさせておきましょう。
進捗の共有
会社全体、あるいはチーム全体で仕事の進捗を共有することも大切です。
なるべくなら、一つにまとめられた共有シートを用意し、誰が見ても進捗状況が一目でわかるようにしておくことが望ましいでしょう。
自分だけ進捗状況が遅れていたりすると、すぐにみんなにわかってしまいます。
ある程度プレッシャーを与えることは、怠けた在宅勤務にならないコツです。
すぐに返信
業務連絡や確認、質問などの連絡は、すぐ返信するようにしましょう。
会社にいれば顔を見て話ができ、すぐに何らかの返事がもらえます。
しかし在宅勤務では、今どこで誰が何をしているのかがわかりません。
返信がなければ止まってしまう業務もあるかもしれません。
全員がスムーズに仕事ができるよう、連絡が来たらすぐに対応するようにしましょう。
そして、離席中や電話中などすぐに対応できない場合は、そのことがわかるようなツールを用いましょう。
熱中しすぎない、終了時間を決める
在宅勤務をしていると、ついつい夜中まで作業してしまったり、食事を抜いたりしてしまうことがあります。
せっかくワークライフバランス(仕事と生活の両立)の向上のために在宅勤務を取り入れたのに、不健康な生活をしてしまっては元も子もありません。
在宅勤務の長所は、仕事をしながらも家族との時間や自分の時間を大きく確保できることです。
止める人がいないからといって、いつまでも仕事をしていては、逆に家族から反感を買ってしまうことになりかねません。
いくら熱中しているとしても、終わる時間を決めてスッパリと終われるようにしましょう。
管理する上で大切なこと
業務時間が長すぎないか気にかける
部下に在宅勤務をさせていると、提出してきた物で実績を見ることはできても、実際どれだけの時間を費やしているかは見えません。
中には頑張りすぎて、昼夜問わずいつまでも仕事をしている部下がいるかもしれないのです。
もちろん頑張ることはいけないことではないですが、在宅勤務になると時間給ではなくなってしまうことがほとんどです。
会社で仕事をすると残業代が支給されますが、在宅勤務では残業時間を計算することが難しくなるのです。
そして、プライベートの充実は仕事のパフォーマンス向上にもつながるので、必要以上に長く仕事をさせないよう、上司は部下の管理を怠ってはいけません。
上司は上手にコミュニケーションをとり、部下は素直に聞き入れることが大切です。
オンラインツールの活用
在宅勤務をしていると、上司や同僚、部下の細かな表情が見えません。
表情が見えない分、どんな思いを抱いているのか気持ちを読み取ることができず、ちょっとした変化に気づくことができない可能性があります。
何か悩みを抱えているのではないか、困難にぶち当たってしまっているのではないかということに気づけないのは、チームのリーダーにとって大問題です。
そんな時は「Slack」や「Asana」、「 Zoom 」、Googleの「Hungout」、 Microsoftの「Teams」など、ビデオ通話ができるサービスを取り入れましょう。
ビデオ会議などで積極的にやりとりをすることによって、小さなSOSにも気づくことができるでしょう。
評価する
仕事は何らかの評価を得るためのものと言っても過言ではありません。
成果をしっかり的確に評価してあげるということは、モチベーションのアップにつながりますし、成長を促す効果もあります。
部下は在宅勤務で上司の顔が見えない分、自分の仕事への評価がどれほどのものなのか特に気になるものです。
ただ指示を出すだけや、確認しましただけでは、自分が良い仕事をしたのかそうでないのかがわかりません。
さらに文章だけでは、言葉の温度が伝わりにくいという難点があります。
離れた場所で仕事をしているからこそ、評価をきちんと伝えてあげることが大切です。
「評価する、褒める、指摘する」は信頼関係を構築する上でとても重要なことですので、怠らずにしっかり伝えましょう。
サボっていないか管理
サボらずに頑張る者もいれば、中にはそうでない者もいるかもしれません。
自宅には様々な誘惑があり、監視の目もないので自由なことができてしまいます。
サボってしまっている者がいないかどうか確認したいのならば、「Focusmate」を活用するのも一つの手です。
「Focusmate」は、互いがちゃんと仕事をしているかどうかを監視するツールです。
勤務開始と同時にカメラをオンにするだけで、仕事をしているかが見えるというツールです。
在宅なのに監視されるのは嫌だという方もいますが、周囲からの圧力はモチベーションアップに効果的であると言われています。
みんなが仕事をしているのが見えるので、まるで一緒に仕事をしているかのように感じられるという利点もあります。
テレワーク・在宅勤務導入時に気をつけたいこと
セキュリティー
在宅勤務では、パソコンを使用しての業務が大半を占めます。
そこで気をつけたいのが、セキュリティーです。
悪意のあるハッカーにとって、在宅勤務初心者は格好の的です。
顧客情報や会社の機密情報などが盗まれてしまっては、会社の信頼を失い、最悪の場合は会社存続の危機にまで陥ることになります。
在宅勤務を導入するにあたって、セキュリティー面は何よりも神経を尖らせなければいけません。
VPN(仮想プライベートネットワーク)やリモート・デスクトップ(自宅から会社のパソコンを操作できるソフトウェア)など、高品質なセキュリティーシステムは絶対に必要不可欠です。
インターネット環境
セキュリティー同様、個々の家で加入しているインターネット回線やWi-Fiの状況を確認し、必要ならばプロバイダーへ確認しましょう。
自宅にプライベートで使っているインターネット回線があるからといって、安易に在宅勤務を始めると、思いもよらない問題が起こってしまうかもしれません。
まだまだ日本には、インターネット環境に疎い企業がたくさんあります。
インターネットの環境整備は、スムーズな在宅勤務を行うための基本です。
スムーズな書類や画面でのやりとり
在宅勤務であっても、必要な書類のやりとりを省略することはできません。
画面を見ながら説明したり、アイデアを出し合ったりすることもあるでしょう。
そんな時は、やはりビデオ会議が便利です。
上記に挙げた「Slack」や「Zoom」などがそれにあたります。
Microsoftの「Teams」では、無料プランで最大300人が参加できます。
Googleの「Hungout」では、パソコンのみならずAndroidやAppleの端末でも利用することが可能です。
それぞれに特徴がありますので、企業規模や事業内容、やりとりしたい内容によって最適なものを選ぶようにしましょう。
快適な在宅勤務をするには
朝起きたら太陽を浴びる
朝、目覚めたらまずカーテンを開け、太陽の光を浴びるようにしましょう。
日光を浴びることによって、ドーパミンの一種である「セロトニン」が分泌されます。
セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれており、精神を安定させ、やる気や集中力をアップさせると言われています。
また、朝に日光を浴びることで、脳が朝であることを認識するので、1日のリズムを作ることができます。
不規則な生活は、うつ病になりやすくなったり、健康を害することになりますし、免疫力が低下すると、風邪を引きやすくなったりします。
「朝起きて、夜寝る」という基本的なリズムを守った生活を送りましょう。
ストレッチをする
長い時間パソコン作業をしていると、血行が悪くなり、肩が凝ったり目の疲れを感じたりします。
それらを解消するため、定期的にストレッチを行うようにしましょう。
起床後や、仕事中、就寝前などに少しだけ時間を作り、ストレッチやヨガなどを行うのが効果的です。
長く在宅勤務が続けられれば、プライベートなど時間を有効的に活用できます。
それは、人生のプランをも良い方向に考えられることにつながるでしょう。
疲れを溜めることなく、適度に発散しながら在宅勤務を行ってください。
外へ出る、散歩をする
在宅勤務を始めると、どうしても気になるのが運動不足です。
朝から夜まで仕事をしてしまうと、結局丸1日家にこもっていることになります。
外の空気を吸うことや、散歩などをして運動不足を解消することは健康上とても大切なことです。
自由に時間を使えるという在宅勤務のメリットを最大限に生かしましょう。
昼寝をする
昼寝は、仕事の効率や集中力のアップにつながるという研究結果が出ています。
昼食後の12時~15時の間に、15分程度の昼寝をすると良いでしょう。
深い眠りに入ってしまい、気づけば夕方なんてことにならないよう、イスに座ったままや机に伏せるなど、すぐに起きられる姿勢で昼寝をしましょう。
目が覚めたら体をゆっくりと伸ばすようにストレッチをして、深呼吸をします。
何か始まりの合図を決めると、仕事モードへ切り替わりやすいでしょう。
テレワーク・在宅勤務を楽しもう
新型コロナウィルス流行の影響で、在宅勤務を突然経験することになったという人も多いことでしょう。
慣れない在宅勤務に戸惑いを感じたり、上手くいかないという方もいらっしゃると思います。
しかし、在宅勤務はポジティブなメリットがたくさんあります。
いい意味での「マイペース」を見つけ、テレワーク・在宅勤務を楽しんでください。